世界文化遺産に登録された富士山に今年こそは、登りたいという登山者も多いはず。
2012年度には30万人を越した登山者であったが、今年はさらに増加することも予想される。
しかし、その一方で安易な気持ちで富士山に登り、遭難するケースも後を断たない。
夏山のシーズンだけでも、2012年は遭難42人、死者1名という残念な報告もある。
と、いきなり不安な気持ちにさせてしまいましたが、しっかりとした準備と知識があれば
日本一に登る事は可能である。
そこで、今回は始めて富士山に登りたい方が気をつけた方がよい10のことをリストアップしたので
皆様の参考になればと思う。
1.富士山に登れるのは7月〜8月の2ヶ月間
2.富士山頂上は夏でも真冬の様に寒い。
3.山小屋に泊まるなら予約は必須。
4.ゴミは捨てられない。
5.天候が悪かったら、退避または撤退する。
6.水分補給をこまめに行う。
7.高山病を防ぐためには、登るまでに2時間くらい高度に体をならす。
8.登山口に行くまでの道にはマイカー規制がある。
9.富士山頂上付近は渋滞する。
10.富士山の○○合目は頂上まで等間隔ではない。
1.富士山に登れるのは7月〜8月の2ヶ月間
読者の皆さんが平地で生活をしていると、半袖で生活できる6月位からは富士山に登れるのでは?
と思われる方もいらっしゃるが、標高が高い富士山では、5月6月でも残雪が残っており、
経験者しか登る事ができない上級の山である。
(真夏でも万年雪が残っている箇所があるが、一般登山道の雪はすべて溶ける。)
また、標高が3776mもある富士山では、初冠雪の時期も早く9月には降雪を記録する。
つまり、雪が存在しないこの2ヶ月間しか実質富士山には登ることが出来ないのである。
7月1日には山開きが行われるが、まだ雪が登っていて、雪かきをして登山道を作ることもあるらしい。
当然7月上旬や8月下旬は冷えこんでいるので、十分な防寒が必要である。
2.富士山頂上は夏でも真冬の様に寒い。
下の図をご覧頂きたい。下の図は富士山の平均気温をグラフ化したもので、東京の平均気温と比較している。
グラフを見ると分かるように、東京の1月〜2月の平均気温と富士山の8月の平均気温が大体同じである事が分かるだろう。
図:富士山と東京の平均気温比較(気象庁データ)
これに加えて、山では1mの風は吹くと、体感温度は1℃下がると言われており、強い時には10m近い風が吹く富士山では体感温度は氷点下を下回ることもある。
何よりも真冬なみの防寒具で寒さをしのぎ、雨具によって風をしのぐなど、本格的な防寒対策をした方が良いだろう。
ここにいる読者だけでも、半袖で登って救助要請したなど、ニュースのネタにならない事を願う。
3.山小屋に泊まるなら予約は必須。
当たり前の様な話でもあるが、実は年配の方ほど予約は不要であると考えていることがある。従来、山小屋は、どんなにキャパシティを超えても泊めてくれるものだったからだ。
確かに富士山以外の一部の山小屋では混雑していても予約なしでも泊めてくれる。
しかし、日本でも稀に見る混雑を見せる富士山では、予約がないと泊めてくれないの。実際に予約なしで電撃的に行って断られることもある。
もちろん本当の緊急時は対応してくれる可能性もあるが、それは山小屋に迷惑がかかる事でもある。
特に今年は例年以上の混雑が予想されるので、週末に行く予定あるならば早めに予約した方がいいだろう。
4.ゴミは捨てられない。
富士山では、ゴミの問題が以前から大きな問題となっている。富士山が世界自然遺産として登録申請できなかった理由の一つに、ゴミ問題があったとも言われている。途中に山小屋は多く存在するが、そこでは一切ゴミは受け取ってくれないので、ゴミ袋を一つ持参しておくといいだろう。
例え小さなゴミ一つでも、30万人が捨てれば、相当な量になってしまう。是非とも意識的にゴミを捨てないようにして欲しい。
5.天候が悪かったら、退避または撤退する。
富士山は周りに何も囲まれていないので、天候の変化を受けやすい。朝には晴れていたのに、昼に雷と雨と風の嵐に襲われることもある。
その場合は、まずは素早く近くの山小屋に避難した方がいい。もし避難するべきか迷って不安を感じるようなら、避難するという判断を下した方がいいだろう。
行く前に天候をチェックして、事前に荒れそうであれば、中止を検討するのが一番である。しかし、事前の判断が難しく行ってみて様子を見るしかない場合や飛行機やバスを予約していた場合など、天候が悪くてもいく事もあるだろう。
それで天候が崩れた場合、一旦山小屋などに退避し、様子を見て最悪撤退することも考えた方がいい。山では撤退することも一つの重要な判断であることを忘れないで欲しい。
実は登山の初心者ほどこの撤退という選択肢がとれない場合が多く、遭難する事も多い。
悪天候で無理に進むと、次のような状態になるリスクがある。
・体が濡れて低体温症になる。
・視界不良で道に迷う。
・強風で転倒して怪我する。
・雷に撃たれてしまう。
悪天候なら最初からやめればいいかもしれないが、長い時間準備して、遠方からきた人ほど無理してしまうのもわからない話ではない。
富士山に行くのであれば、そのような可能性があることも計画段階から覚悟しておくと良いだろう。
6.水分補給をこまめに行う。
富士山登山で結構多いのが脱水症状である。登ることに夢中になりすぎて、気づいたら脱水症状ということにもなりかねない。また、富士山の様な高所は平地よりも気圧が低く、体から蒸発する水分量も多い。喉が渇く前でも、継続的に摂取するように心掛けて欲しい。
飲み物は、スポーツ飲料がいいだろう。もし、登山途中で持参した飲料がなくなった場合、割高にはなるが山小屋で購入することも可能だ。(500mlペットボトルで約500円)
はじめに1ℓ程度持って行き、不足したら買い足すという方法だと、荷物の負担にならなくていいいだろう。
7.高山病を防ぐためには、登るまでに1時間くらい高度に体をならす。
富士山登山で多くの方が不安に思うのが、高山病である。高山病は酸素が薄い高所で発症し、頭痛や吐き気、めまいなどを引き起こす。
これを防ぐ方法は幾つかあるので紹介したい。
一つは、タイトルの通り富士山の登り口についたら、一時間程高所順応を行うことだ。標高2000m前後であれば、一時間でも効果はあるだろう。
他にも、登山道をゆっくり歩く事や、水分をこまめに補給することで、防ぐことができる。
また、定期的に深呼吸して体内に酸素を取り入れるのもいいだろう。
仮に高山病にかかってしまった場合は、一番の根本解決は標高を下げる事だ。
100m下げるだけでも効果は大きい。
よく富士山で高山病にかかった人が横になって寝ているのを目にすることがあるが、この対処は実は誤りである。
人は横になったり、眠ったりすると、呼吸が浅くなり、酸素の体内への供給量が減ってしまう。
高山病にかかってしまったら、首回りや胸回りの装備や服を少し緩め、ゆっくりと深呼吸するようにするとラクになるだろう。
8.登山口に行くまでの道にはマイカー規制がある。
富士山の登り口には駐車スペースは存在するが、その台数は少なく平日であっても駐車渋滞が発生する。それを防ぐために、富士山の各主要コースの登山口へのアクセス道路に毎年マイカー規制をかけている。
マイカー規制期間中は、登山口より標高が下の臨時駐車場に停めシャトルバスで登山口まで移動することになる。一見面倒に感じるが、混雑した中で駐車場を探すよりも、スムーズにいくので、それほど心配せずに利用してほしい。
各コースに応じたマイカー規制情報はこちらにまとめてあるので、参照して頂きたい。
https://yamaiko-portal.com/fujisan/access
9.富士山頂上付近は渋滞する。
年間登山者30万人の内、ほとんどが2ヶ月の期間に集中するため、特に週末ともなると頂上直下では
長蛇の行列が発生する。特に、吉田口と須走口の二つの登山道は頂上直前で合流するため、ひどい渋滞が発生する。
筆者の体験だが、以前頂上まで20分の距離にも関わらず、行列で1時間以上待った事もある。その時は、頂上でのご来光に間に合わず、
登山道途中でご来光の眺める事になってしまった。
頂上でご来光を見たいのであれば、頂上近くの山小屋に宿泊して早めに出発するなり、混雑が少ない登山道(御殿場口や富士宮口)を選択して頂きたい
10.富士山の○○合目は頂上まで等間隔ではない。
富士山の○○合目、由来としては、富士山の頂上を1升に見立ててそれを10等分したとか、登山の大変さを元に区切ったなど諸説などがあるそうだが、
登って分かるのは、決して合目が等分ではないということ。
富士山の主要4コース(吉田口、須走口、御殿場口、富士吉田口)について見てみると、いずれも5合目からスタートする。
5合目の次は6合目、6合目の次は7合目という風に考える読者も多いと思う。
しかし、実際に行ってみて驚くのだが、例えば、吉田口の8合目の次は本8合目となる。しかも、その間には10以上の山小屋があり、どれが本物の8合目なのか迷ってしまう。
実際に登っていて、次が9合目だと思っていたらまだ8合目だったとなると、本当にがっかりする。
どうしてこうなったのか、調べてみると以前は7合3勺、7合5勺など細かく分かれていたが、分かりにくいので繰り上げして8合目にしたらしい。
それだと元々の8合目がどこか分からないから本8合目という名前にしたという事らしい。
まとめ
これだけ有名な富士山でも、意外な事実があったのではないかと思う。
今回ピックアップした10項目以外にも気をつけなくてはいけないポイントは多くあるので、
登る前には十分な下調べをして頂きたい。そして、富士山頂上で日本最高の景色を楽しんで頂ければと思う。